人生は体験でできている

イギリスに行って思ったこと。「テレビがつまらない…」

サッカー以外見る番組がない。(クリケットとかポロとか知らないスポーツはやっている。)日本にあるようなバラエティーやお笑いなど面白そうな番組などやってないのである。土曜の朝のテレ東でやっていたような、日本製のアニメが吹き替えで放送されていたりする。はっきり言って、スポーツとニュース以外は見ていられない。

それに引き換え、日本のテレビは素晴らしい。NEWSや情報、お笑いから教育まで全ての情報がテレビから得られる。時に過剰の情報にどうしていいか迷うこともあるが、そのことについてはここで議論をするのはやめておこう。とにかくテレビを見ていると時間を忘れてしまって、「そろそろいい時間になったから寝ましょう」なんてことがついつい起こってしまう。

日本のテレビ番組が面白いのは、日本の視聴者は洗練されているからだ。テレビ独特の間やテンポを理解し、その芸能界に精通し、つまらない番組にはシビヤに数字で評価を下す。文字通り、全国民の目にさらされているのだ。
それに引き換えイギリスはというと、サッカー以外はテレビを見ていない。例えば、自分のうちのテレビで、何チャンネルがどの放送局かを把握している人はほとんどいない。日本(関東)では、フジテレビが何チャンネルか答えられない人はいないだろう。イギリス人は、テレビを見ないで何をしているかと言うと、パブに行って飲んだくれているのだ。酔っ払いとフーリガンの国だ。ある日曜日に昼からパブに居たら、イギリス人たちは昼からビールで酔っ払い、議論して、サッカーを見て、熱くなって、最後には老若男女(PG18)皆で歌を歌う。



話を日本に戻させてもらいたい

80年代の後半から90年代前半にかけて、テレビが一家に一台から、一部屋に一台の時代を迎えた。部屋に一人で閉じこもって夜中までテレビをみるようになった。深夜番組は面白さを増していき、コンビニの普及とTVゲーム浸透が日本人の生活の深夜化に追い討ちをかけた。その頃から日本人の学力が下がり始め(この指標の有意性についてもここでは議論しないが、何をもって学力とするかはとても大切な問題だと考えている)、同時期に紅白の視聴率も下がり始めた。
この二つの指標の下降は、何も関係がないことだろうか。そんなことはない。紅白の視聴率の低下は、日本社会における家社会の崩壊の象徴である。そして、家社会の崩れが、日本人の学力の低下を招いてしまった。「今年の紅白の試聴率は33%でした」というニュースは、「今年の日本では、33%の人が家や実家で家族と過ごしていたようです」と読み替えてしまうのは、あまり的外れではないように思えてしまう。家という学びの場がなくなってしまえば、学力が下がるのは当然と言える。




人生とは体験でできている。
家族で集って語らい、食事をするということは、人生のかけがえのない体験なのである。社会における最も小さな単位である家庭の中で人間関係が上手く構築できない人間が、会社や学校など大きな社会に出たときにどのように人々と上手くやっていくことができるだろうか。自分の話を聞いてもらうことの喜びをどこで教えればいいのだろう。人の話を聞くことの大切さをどこで教えてあげればいいのだろう。人は、おなかが空いているときは不機嫌で、おいしいものを食べているときは幸せだということをいつ学ぶのだろう。
テレビに大切な事を奪われてはいけない。



人生は体験でできている。
大人が、実社会の中で経験できないことをテレビに頼るのは決して悪いことではないだろう。しかし、成長途中の子供達が、体験をテレビに置き換えてしまうようなことがあったら、その社会はどうやって成長をすることができるだろうか。我々は思考をめぐらせ、悩み、行動し、失敗してこそ進化・成長するのである。テレビは私たちの代わりに進化をしてくれない。
我々はテレビによって、考える力と自主性を奪われてしまった。正確に言うと、テレビを手に入れるために考える力と自主性を手放した。テレビには、考える力と自主性は邪魔だから。今では、テレビの中にアイデンティティを求めている人間さえ出てきてしまっている。
しかし我々は決して忘れてはいけない。私達が人間であることができるのは、自分の力で考えるということをするからだ。私達は「考える葦」だから。自分で考え、行動すること。これを私達は人生と呼んでいる。



家の全ての部屋に明かりが灯り、全ての部屋でシャッターのような青白い光が不規則に光る社会が進化した社会といえるのだろうか。街に人が溢れ、酒を飲み、泣き、笑い、語らう社会が進化しているのだろうか。

街に出よう。友や恋人と語らい、家族と朝ごはんを食べよう。

[rakuten:book:11519380:detail]
陰山先生の考えが分かりやすくまとめられた一冊。なぜ日本人の学力が落ちてきたか、日本は教育と言う最重要課題にどのように立ち向かっていくべきか、家庭はどうあるべきか。様々な視点と対応策を伝えている。