マーケティングとはリーダーシップである

僕の大好きなお寿司屋さんに「海味(うみ)」という店がある。長野充靖さんという素晴らしい親方が数名の気合の入ったお弟子さん達と営んでいる、カウンターに10人くらいが座れる小さなお店だ。どの位好きかと言うと、母親には申し訳ないが人生最後の食事はここで寿司を食べたいと思っているくらい好きだ。
ただ、東京にはおいしいすし屋は山とある。実際に先輩に連れて行って頂いたり、自分で行ってみたりと他のところも伺ったこともあるが、その度に寿司の世界は深いなぁと考えさせられる。ただ、やはり好きという意味では「海味」が好きだ。なぜ、そこまで好きなんだろうか?その答えは、長野氏のリーダーシップだと思っている。彼は寿司を握りながら私達を自分達だけではたどり着くことのできない場所へいざなってくれる。例えば、「長崎五島列島でとれた赤鯛です」とか「仙台ゆりあげ町、今朝取れた赤貝です」と色々と解説をしてくれる。また、「そろそろおなかが一杯です」とこちら側が言おうものなら、「今日は最後に鮪と穴子は食べてからお帰り頂きたい」と心地よい指導で促してくれる。静かに食事をしたい人もいるとは思うが、知らない側の人間を知っている側の人が導いてくれるのは決して嫌な感じはしないし、それによって喜びが増加する。長野氏は自分の知っていることをお客様にも経験してもらって、同じ感動を共有したいという気持ちを持って接客をしている。これこそまさに、リーダーシップだと言える。

マーケティングとは、リーダーシップだと言ったのはJay Abrahamだが、リーダーシップの無い接客を受けた経験はないだろうか?例えば、「このお店では何がおいしいですか?」と聞いて「それはお客様の好みなんで」と言われてしまったり、結構高いゴルフクラブを買おうと気合を入れて買い物に行っても、ケースに入っている高いクラブを見せてくれなかったり、僕らが知らないものを教えてくれない店員の接客にイライラしてしまうことは時にある。ただ、これと同じことを僕らはしていないと言い切れるだろうか。お客様は、結果を求めて我々のところに来てくれているのである。お客様が結果を得るために、我々はサービスの提供を躊躇してはいけない。また、その結果が得られないと分かっていて、サービスを提供してもいけない。例えば我々は寿司が食べたくて、寿司屋に行くのだろうか?突き詰めて考えると答えは「NO」である。「おいしいと言う感情を持ちたい」という願望を満たすために寿司屋に足を運んでいるだけで、究極的に言うと「海味」での感動を他でも得られるなら他の店でも構わないのだ。


リーダーシップを持ってお客さんと接するための4つのポイント
リーダーシップがマーケティングに大切だと言うことは理解してもらえたと思うが、具体的には何を気をつければいいのだろうか。簡単に4つにまとめてみた。
1. 顧客の結果にフォーカスする
繰り返しになるが私達が提供しなければいけないのは結果である。なぜならば顧客は結果を求めているからだ。例えば、人は電車そのものに乗りたいのではなくて、安くて確実な方法で目的地に着きたいから電車に乗るのである。これと同じように、本質的に顧客が求めている結果にフォーカスする必要がある。キャタルで言うならば、顧客は英語のレッスン自体受けたい訳ではなく、レッスンを通じて英語力を向上させると言う結果が欲しいのである。サービスを提供する側と提供される側で結果を理解しあって、そこにフォーカスをおくことが必要である。余談ではあるが、トータルワークアウトはその点をしっかりと理解しているから、短期間に成長したいいい例だろう。彼らの顧客が本質的に求めていることは、フィットネスに行くというその行為ではなく、理想の体型を手に入れる(体重を減らす)であることをお互いに強烈に理解し、それに必要なことは、食事制限からトレーナー付の過酷な筋トレ、プロテインの摂取、マッサージとありとあらゆることをする。勿論それらは全て有料である。それでも強力なリーダーシップで顧客を引っ張るビジネスモデルは、結果にフォーカスが当たっている点で非常に評価が高い。

2. 自分の提供しているサービスに自信を持つ
自分のサービスに自信が無ければ、お客様に対してリーダーシップを発揮することができない。それと同時に、自分達が提供しているサービスが高いからといって、それを提供することを躊躇してはいけない。なぜならば、中途半端なサービスを提供することで、お客様が本当に欲しい結果が得られないことがあるからだ。そうなってしまった場合は、自分達が大きな収益チャンスを逃すだけでなく、欲しい結果を得れなかった顧客も同様もしくはそれ以上に大きな損害をこうむる。

3. ほれ込むべき対象は商品ではなく、お客様である
職人と呼ばれる人で成功している人達は、自分が提供しているサービスをこの上なく愛している人たちだ。しかし、その中にも原動力が提供している表品そのものにあるタイプの人とその商品を通じて顧客が喜ぶことに求めている人の二通りいる。顧客にほれ込み、その人に何かを与えたいと思った時に、職人や営業マンは本当の意味での顧客のアドバイザーになる。「海味」の例で言うならば、親方がもし寿司にだけ愛情を注ぐタイプの人であるならば、あそこまでの感動を我々は味わうことはできないだろう。彼は顧客が好きだからこそ、あそこまで商品に対してこだわりを持てているのだろう。反対に営業マンが商品や会社にだけほれ込んで商売をした場合、顧客は不幸になる。提供している商品やサービスを通じて、顧客を喜ばすことができる人こそがリーダーシップを持てる。

4. 顧客のニーズを常に自分のニーズよりも優先させる
顧客にお金を使わせることがリーダーシップだというような論調で書いてきたが、そうではない。顧客が求めている結果を得るためには、そこまで高いものでなくても十分足りる場合は値段が安くてもそちらを進めるのもまたリーダーシップだ。極端な例かもしれないが、ある人があなたの勤めるワインショップにやってきて、料理用のワインが欲しいと言って高価なワインを手にしたときにあなたは何と答えるだろうか。そこで、しっかりとした説明をしてあげることで、その顧客は今回は安いワインを買って帰ったとしても、次回以降ワインを買うときはあなたをよきアドバイザーとして選ぶはずである。

実はこれは、Jay Abrahamの卓越の戦略を簡単にまとめたものである。興味がある方は是非彼の著書「ハイパワーマーケティング」を一読願いたい。

ハイパワー・マーケティング

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