量が質を凌駕する

仕事をしていて思うことは、初めから質を追求することは難しいということ。知らない世界に思いをはせて質を追求しようとするよりも、知っていることを確認しながら量をこなしていく方が、最終的には高い質のものを得られると思う。
特に、人を教育するに当たっては、はじめから質を求めるのではなく、なるべく多くの機会を作り、それを一つひとつこなしながら学びを得て成長していくモデルを作ってあげるのが一番成長が速い。大分前のブログに「守破離」について書いたが、まさに「守」の段階ではとにかく自分の目の前のことをこなしてみる。しかも量を意識して。その中から、いくつか自分の流儀や考えなどをアレンジしていき、最終的には自分らしいものを作り上げる。この成長のモデルは人を育てるときだけでなく、自分自身を学習の場に身を置くときにも適応することができる。一週間に一冊本を読む、毎日ブログを更新する、毎日英語を勉強してみる。また、いい本に出会おうと思ったら相当量の本を読む必要があるし、人との出会いに関しても同じことが言えるかもしれない。
最近齋藤孝氏と梅田望夫氏の共著、「私塾のすすめ−ここから創造が生まれる−」を読んだ。本を連発して出している二人だけあって、この本の中にも量にこだわっているという記述が随所に出てくる。そのなかで、自分の目標を質で評価するのではなく量で評価しているイチローの話が出てきた。打率で評価すると失敗が気になる。その代わり安打数で評価すると、失敗が気にならず積極的に打っていける。自分の評価を量に集中させたこと、つまり安打数に集中したことが彼のアウトプットを生み出す一つの原動力になったと言える。「量をこなすことを恐れない」「負けることを恐れない」ことが両氏(この言葉は斎藤氏のもの)の思想の基本にあり、それが全体として社会に大きなインパクトを与える結果になっているのだろう。
「量が質を凌駕する」このブログも見習いたい言葉だ。

私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書)

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